世界一裕福で哀れな少女がメキシコに遺した夢。カミノレアル・スミヤ

August 8, 2018

 

突然ですが、こちらの日本家屋。どこにある建物でしょう?京都?鎌倉?実は、メキシコはモレーロス州ヒウテペック地区(Jiutepec, Morelos)にあるホテル、スミヤなのです。

現在はカミノレアル系列となっているこのスミヤ。今回はその歴史や楽しみ方をご紹介します。

 

 

 

スミヤ、その歴史

米ディスカウントショップチェーン店・ウールワース創始者の孫娘としてこの世に生を受け、若干7歳にして約5億6千万ドルの遺産を相続。瞬く間に世界で一番裕福な少女となったバーバラ・ハットン。彼女こそがメキシコでまれにみる本格的な日本家屋・スミヤを生み出したその人です。

 

 

世界一裕福となるも、莫大な財産ゆえに妬まれ、疎まれ、裏切られ……決して他人に心を開くことをせず、身も心も浮草のように生きていたバーバラ。彼女がその温暖な気候を気に入り、別荘を建てるべくヒウテペックに土地を購入したのが1959年のことだといいます。

 

 

木石材から調度品に至るまでのすべてを日本から取り寄せ、贅の限りを尽くした別荘でしたが、1979年にバーバラが孤独のうちにその生涯を終えた後、一時アメリカの銀行の管理下におかれました。一度日本大使館へ購入の打診があるもその計画は頓挫。メキシコ50代目大統領、ルイス・エチェベリアが買収し、レストランへと改装され、その後1994年からカミノレアル系列のホテルになっています。

 

 

 

その名の由来

ヒウテペックに日本風の別荘を建設するにあたり、その目玉でもあった日本庭園造園を請け負ったのが、小栗順造氏の営む小栗造園会社でした。

小栗氏同行の元、幾度となく装飾品の買い付けに日本へ足を運んだバーバラの心を惹きつけたのが京都の老舗揚屋である角屋(スミヤ)。そこで建設中の別荘にもスミヤ、という名前を付けたのだといいます。

 

 

 

立派な門には「薔阿薔薇 波津頓 角屋」の文字が読めます。

 

 

 

クエルナバカ在住の造園師、小木曽貞義氏は小栗順造氏の遠縁にあたり、スミヤの造園にも関わった生き証人。かつて小木曽さんにインタビューをしたことがあるのですが、彼は別荘管理のために4年ほどスミヤに住んでいたそう。当時のスミヤの光景をこう話してくれました。

 

 

「かつて、母屋の客室には絹で織られた絨毯が敷いてありました。それから風呂は金で縁取られていましたよ。食器も日本から取り寄せた漆器や陶磁器などの贅沢なものばかり。彼女は世界中に同じような贅を凝らした別荘を持っていましたから、スミヤには1年のうち2か月いるかいないか、だったのですけれどね。」

 

 

 

こだわりの歌舞伎座と石庭

スミヤの中でも刮目に値するのが歌舞伎座とその脇にある石庭。現在は週末限定で一般公開しています。冒頭の写真が歌舞伎座の外観ですが、歌舞伎座といっても、サイズや造りは日本にある歌舞伎座とは異なります。おそらくは角屋のお座敷をイメージしているのではないか、ということ。

 

 

この内装で面白いのは、すべて日本とメキシコのフュージョンがモチーフになっているところでしょう。

例えば、天井に描かれている植物はすべて日本にもメキシコにも生息している種を選んでいます。

 

 

また、舞台正面にある山。これは富士山……と思いきや、メキシコのポポカテペトル火山。

 

 

そして、歌舞伎座右手にあるこの襖絵は、竹林と虎、という古来から日本でポピュラーなモチーフに、メキシコの神話で神として扱われているジャガーを織り交ぜたユニークなもの。バーバラの没後、複数の人間の手に渡ったことでこの建物についての詳細は失われてしまい、絵師は誰だったのかといったことはもうわからなくなっているのだそうです。

 

 

後方にはこのようなお輿が飾られています。

 

 

1人目の夫から「太りすぎ」と言われたバーバラは極度の拒食症に陥り、晩年は一人で歩くこともできなかったといいます。スミヤではこのお輿に乗って広い敷地内を移動していたそう。

 

 

そしてこちらが石庭。バーバラが足しげく通った京都の竜安寺の枯山水をイメージしています。この大きな石もすべて日本から運ばせたものだというから驚きです。

 

 

さてこの庭の石、一体いくつあるのでしょうか。14個?15個?縁側の立つ位置によって、見える数が違うのだとか。いわくバーバラが「物事は、見る場所によって見え方が違う。真実は一つではないのだ」というメッセージを込めた、という話です。本家、竜安寺の石庭の石にも様々なメッセージが隠れている、といいますね。

 

 

歌舞伎座見学は下記の時間帯で行われています。参加ご希望の際は受付まで。

金・土/11:30、16:30

日/11:30-13:30

*カメラおよびビデオ撮影は禁止されています

 

 

取材当日、歌舞伎座前でcivil婚の式(役所への正式な婚姻書類提出時に行うもの)が行われる、ということで、普段は保護のため戸板の下に隠れている襖絵も見ることができました。歌舞伎座前で挙げる結婚式……ちょっと変わっていて粋ですね。

 

 

 

宿泊してスミヤを楽しむ

さて宿泊する場合、ホテル部分は日本家屋ではなく通常のホテルです。が、お部屋のデザインはふすまや障子をイメージするなど、できるだけイメージを崩さない工夫が凝らされています。

 

 

敷地内のプールは幼児用の浅いプールと一般プールがそれぞれ1つ。もともと温暖な気候ですが、プールにも温水が流れており、日が陰ると途端に冷える!ということもありません。

 

 

!注意!

ホテル周辺はお屋敷別荘が立ち並ぶ地区で、レストランやコンビニはまったくありません。ちょっと食事は外に出て、と思うと車で20分程度のところにあるクエルナバカのセントロに出る必要があります。

Uber利用の場合、70~80ペソ程度の距離ですが目的地を「Camino Real Sumiya」とホテル指定するのをお忘れなく。あたりのお屋敷街一帯も「Sumiya」ですので、この近辺に詳しくないドライバーの場合、迷う可能性大です(と経験者は語る)。

 

 

 

スミヤでブッフェを楽しむ

ホテルには2件のレストランがあります。ブッフェはいずれも宿泊者以外の利用も可能です。

 

歌舞伎座近くにあるアルボレーダ(Restarante Arboleda)では月曜~土曜の毎日7:00-12:00でコンチネンタル・ブッフェを提供。

ですが、筆者がぜひおすすめしたいのが日曜のブッフェ。かつて母屋だった建物でいただく豪華なブランチは、日曜のちょっと贅沢な時間を過ごす人々や家族での集まりで、11時ともなると長蛇の列ができていました。ブッフェの利用は15時まで。その後は、アラカルトのフュージョン日本食(メキシコ人好み)メニューとなります。

 

 

ワインやシャンパン、生ビールなどのアルコールも飲み放題ですので、ここはゆったり過ごすのが〇。

 

 

土曜日にクエルナバカに入り一泊、日曜のブランチを楽しんでからゆっくり敷地内や歌舞伎座見学をする、という週末の楽しみ方。いいのではないでしょうか?

 

ブッフェ@Restarante Arboleda

月~金/ 07:00-12:00

大人 $255、子ども $150

土/ 07:00-12:00

大人 $350、子ども $170

 

ブッフェ@Restarante Sumiya

日/ 07:00-15:00

大人 $425、子ども $235

 

 

Camino Real Sumiya

Int. Fraccionamiento Sumiya S/N, Col. José Parres, Jiutepec, Mor.

Tel. 777-329-9888

www.caminoreal.com

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